小説版「ホームズ対切り裂きジャック」の感想

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河出文庫から出ている
マイケル・ディブディン著 「シャーロック・ホームズ対切り裂きジャック」 を読み終えました。

私は読み始めてすぐに、切り裂きジャックが誰なのかわかってしまいました。
ですが、たとえ真犯人を知っていても、この小説の持つ力が薄れることはありません。
物語の終盤で予想を遥かに上回る展開に度肝を抜かれ、最後の最後で衝撃と共に感動する。
ホームズパスティーシュ(パロディのこと)小説の中で、衝撃度では間違いなく一番でしょう。

私が実況したゲーム版「ホームズvs切り裂きジャック」で見慣れた単語が次々と出てきて、思わずニヤりとしてしまいました。

物語は、アニー・チャップマン殺害事件で世間が賑わっているところから始まります。
つまりホームズ達の捜査は、リズ・ストライドとキャサリン・エドウズの連続殺人事件から幕を開けます。
そして中盤で早くも、切り裂きジャックの最後の犠牲者と見られているメアリー・ジェーン・ケリーの事件が起きます。
そこから急激にストーリーが加速し、ページをたぐる手が止まらずに、3日で読み切ってしまいました。

小説の後半まで読んだ時点での感想は、
 「私は、著者のディブディンを絶対に許さない、絶対にだ」
というものでした。
が、全て読了してしばらくジッと考えていると、
 「ここまで人に衝撃を与えるパスティーシュを書く力は凄い。案外、この小説が、ホームズパスティーシュの最後に行き着く到達点なのかもしれないな」
と思いましたね。

「予想の遥かに斜め上をいく展開」という感想を聞いていたので覚悟はしてましたが、そんな覚悟もぶっ飛ぶくらい常識外れの展開でした。
自分としては、久しぶりに読み応えのある小説を読めて大満足です。

この小説を忌み嫌っている人も沢山いるでしょうけど・・・

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映画シャーロック・ホームズ感想

2009年制作の映画「シャーロック・ホームズ
監督:ガイ・リッチー
キャスト:
シャーロック・ホームズ/ロバート・ダウニー・ジュニア
ジョン・H・ワトソン/ジュード・ロウ
アイリーン・アドラー/レイチェル・マクアダムス

ホームズとワトソンは、黒魔術に絡んだ連続殺人事件を追っていた。
ようやく黒幕のブラックウッド卿を捕まえ、彼は絞首刑になる。
だが、しばらくして彼は蘇り、新たな陰謀が動き出す・・・
はたして、本当に黒魔術は存在するのか?
ホームズは調査を開始する。

新ホームズ


全く新しい肉体派のホームズでした。
ダメ人間の側面が強調されてましたね。これはこれで面白い。
映画の観客がホームズと一緒に事件を推理するというよりも、ホームズの怒濤の推理をポカーンと観てる、といった感じです。娯楽作品として、ホームズを新たに解釈し直す試みは斬新でいいですねー。
アイリーン・アドラーやレストレード警部やミセス・ハドソン、ワトソンの奥さんのメアリー・モースタンも出てきて、シャーロキアン(ホームズの熱狂的ファンのこと)も楽しんで観られると思います。

それから、フランスのADVゲームサイトに、この映画がFrogwaresのゲーム「Sherlock Holmes: The Awakened」から多大な影響を受けている、という興味深い記事がありました。
私はフランス語は読めませんが、影響を受けている場面の比較写真があったので載せておきます。
(左の写真が映画、右がFrogwaresのゲームです)

比較1
左:映画冒頭のシーン
右:The Awakened Part01の冒頭のシーン

比較2
ホームズとワトソンの下宿の入り口。”221B”番地の表示が見える。

比較3
左:アパートの窓辺にたたずむワトソン
右:The Awakened Part01の冒頭。窓辺にたたずむホームズ

比較4
左:ブラックウッド卿の「まじないの書」
右:The Awakened Part14で手に入れたクトゥルフの呪いの本

比較5
左:ブラックウッド卿の黒魔術の儀式を再現するホームズ
右:クトゥルフの呪いの本に書いてあった儀式を再現するホームズ(The Awakened Part14

比較6
左:ホームズがまじないの書から再現した魔方陣
右:アードナマーカム灯台で行われていた”偉大なる主”復活の儀式(The Awakened Part17

比較7
左:負傷したワトソンの入院部屋
右:ギボンズ医師の診療所(ホームズvs切り裂きジャック Part02

比較8
左:医者に変装したホームズ
右:ブラックエーデルワイス協会で、医者に変装したホームズ(The Awakened Part09

比較9
屠殺場に並んだ豚の頭のカット。右はホームズvsジャック Part18

比較10
ホームズが銃で壁に書いたVR(Victoria Regina:ヴィクトリア女王)の文字。右はホームズvsルパン Part01に出てくる

比較11
左:ホームズがアイリーン・アドラーを尾行したときの変装
右:ホームズvsジャック Part11で、ホームズがホワイトチャペルに潜入捜査したときの変装


どうですか?
ハリウッド映画がFrogwaresのアドベンチャーゲームを参考にしてたなんて、ワクワクする話だと思いません?

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映画「インセプション」感想

「インセプション」という映画を観てきました。
以下、ネタバレはしませんが、ストーリーに触れます。
監督は「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン。
主演はレオナルド・ディカプリオ。

ディカプリオは、ターゲットの夢の中に侵入して、重要な情報を抜き取る仕事をしている。
謎の投資家サイトー(渡辺謙)はディカプリオに、ある仕事を持ちかける。
大企業の御曹司に、自分の会社を潰すという考えを「植え付ける」仕事だ。
人の考えを抜き取れるなら、植え付けることもできるだろうという理屈である。
ディカプリオは有能なメンバーを集めて、御曹司の夢の中に侵入する。

以上があらすじです。
単純なストーリーですが、
この映画の画期的なところは、夢の中で、更に夢の中に入り込めるという点。
現実から夢の中に入った状態を1層、そこから更に夢の中に入るのを2層とすると、
この映画ではなんと、5層まで入って行きます。
そして層が深くなるほど、体感時間が長くなる。つまり、1層目の世界では2分しか経っていなくても、2層目では20分、5層目の世界では何十年も経っていることになる。

夢から覚めるためには、「キック」をします。
「キック」とは、夢を見てる人間に、物理的に衝撃を与えること。
ぶん殴ってもいいし、ピストルで頭を打ち抜いて、夢の中で死んでもいい。
「キック」すると夢から覚めて、1層上の世界に戻ります。
劇中では、この「キック」をそれぞれの層でタイミングを合わせて、一気に現実の世界に戻れるような計画にしています。
こう書くと複雑そうですが、実際に映画を見ると非常にわかりやすいのが、この映画の脚本の凄いところ。

面白いのが、現実の世界では10時間しか経っていないのに、
最深部に潜ってしまったあるチームメンバーにとっては、数十年も時間が経ってしまって、夢の中にいることさえ忘れてしまう。

私が思うに、この映画のテーマは「なにが自分にとっての現実なのか」です。
平たく言うと、「夢の中の方が幸せなら、そっちを現実と決めてしまってもかまわない」です。
でも、このテーマについてちゃんと考えるなら、実存主義を勉強しないといけないんだろうな。
メンドくさいお・・・

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